PERFECT DAYS パーフェクトデイズ

staff

  • 監督

    ヴィム・ヴェンダース

  • 脚本

    ヴィム・ヴェンダース
    高崎卓馬

  • 製作

    柳井康治

  • エグゼクティブ
    プロデューサー

    役所広司

  • プロデュース

    ヴィム・ヴェンダース
    高崎卓馬
    國枝礼子
    ケイコ・オリビア・トミナガ
    矢花宏太
    大桑仁
    小林祐介

  • 撮影

    フランツ・ラスティグ

  • 編集

    トニ・フロシュハマー

  • リレコーディング
    ミキサー

    マティアス・ランパート

  • インスタレーション
    撮影

    ドナータ・ヴェンダース

  • インスタレーション
    編集

    クレメンタイン・デクロン

  • 美術

    桑島十和子

  • スタイリング

    伊賀大介

  • ヘアメイク

    勇見勝彦

  • キャスティング
    ディレクター

    元川益暢

  • ロケーション

    高橋亨

  • ポスプロ
    スーパーバイザー

    ドミニク・ボレン

  • VFXスーパーバイズ

    カレ・マックス・ホフマン

共同脚本・
プロデュース

高崎卓馬

さて、平山さんに
会いに行こうか。

私は今、人生のこのタイミングでヴィム・ヴェンダースという人と出会えて本当に幸せでした。彼の映像に対する考え方、映画へのアプローチの仕方、世界のみつめ方、それらは自分のなかの迷いに近い拘りをきれいに吹き飛ばしました。フロントガラスのずっととれずに半ば諦めていた曇りが消えたような感覚があります。日本という場所で、日本人のキャストと、日本語だけで、日本の物語をつくる。その過酷な条件があったおかげで(監督はとても大変だったと思いますが)私は最前列でこの映画が生まれるプロセスを目撃することができました。

監督は撮影がはじまるたびに「平山に会いにいこう」と言っていました。フィクションの存在を、ドキュメントのように慎重に(こちらの思い込みで切り取らずに)みつめる。それはとても美しいアプローチでした。役所さんが現場に入った瞬間に、そこにはもう平山がいました。役所広司という俳優がいかにしてそこに到達したのかわかりません。何度か聞き出そうとしたのですが核心にふれることはできませんでした。言葉にしてしまうとそれ以下のものにしかならないからなのかもしれません。そう考えると好奇心にまかせてずいぶん無粋なことを聞いてしまったと反省しています。

ヴェンダースは正しい距離をずっと、もしかしたら今も、キープしている気がします。本当に存在するひとなら、そうすると思います。そこが僕の浅さと彼の深さの決定的な違いです。撮影が進むとやがてテストというものがなくなっていきました。これには本当に驚きました。俳優の凄さと監督の深さがそれを成立させています。ミュージシャンのセッションのような時間でした。

平山という男が、自らあの暮らしを選びとったのだ。そのことを僕は映画ができあがってから気づきました。脚本には書けないものがスクリーンには映っています。これは本当にすごいことだと思います。

僕たちがこんなにも自由に迷いながらやってこられたのは、柳井康治というひとの「面白いものを面白がる才能」のおかげです。この映画がくれたたくさんの宝物を糧にして、できるだけたくさんのひとが平山さんに会えるようにしていきたいと思います。

企画・
プロデュース

柳井康治

アートの力で。

東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定した頃、かつて父と交わした「人は誰でも一人一人違う。誰ひとりとして同じ人はいないという意味で平等である」という会話を思い出し、あらゆる人に開かれた、人間の根源的な部分に関わるものを対象に「自分なりのおもてなし」として始めたのがTHE TOKYO TOILET という渋谷区の公共プロジェクトでした。著名なクリエイターの皆さんに「誰もが使ってみたくなる公共トイレ」を新たにデザインしてもらうTTTは、公共トイレの新たな価値創出に繋がったと思っていますが、同時に清掃・メインテナンスの重要性を痛感させられました。「家のトイレは毎日掃除しなくても汚れないのに、公共トイレは1日複数回清掃しても汚れてしまう。」TTTへのポジティブな反応とは裏腹に、清掃の状況は重たい課題として現在も継続しています。こうした負の行動連鎖を少しでも良い方向に変えたいと高崎さんに相談した際、「個々の建築物としてではなく、TTTのトイレすべてが価値・意義あるものとして捉えてもらう努力が必要。そのためにアートの力が有効かもしれない」という言葉をもらいました。TTTの真の価値は、建築的価値のみでなく、日々汚れていくトイレを毎日毎日清掃し続ける清掃員の奮闘にこそあり、アートの力を通じて清掃員の皆さんへの感謝や敬意を表したいと考えるようになりました。では、アートの力とは何か?例えば、美しい芸術作品に出会った時、それが何か分からずとも感動することがある。そんな理屈を超えた感情は、きっと潜在意識に何かを植え付け、行動変容を引き起こす可能性すらある。こうした感情や行動の「揺らぎ」を意図的に起こす事に挑戦する為”TTT Art Film Project”が生まれました。

ヴィム・ヴェンダース × 役所広司は、トイレそのものを美しく切り取り、清掃員の日々の仕事に尊厳を与えるという意味で最高の組み合わせだと思います。

そうして完成したPERFECT DAYSを初めて見終えた時、僕は今までの人生で一度も経験したことのない感情に囚われ、言葉を発することが出来ませんでした。これからPERFECT DAYSをご覧になる方々の心の中にも、何かが芽生え、それが少しでも良い方向に気持ちや行動を変化させるものであって欲しいなと切に願っています。そして、TTTを訪れ、平山さんを探し、平山さんを感じ、平山さんに会いに来てください。