ヴィム・ヴェンダース、1945年生まれ。70年代のニュー・ジャーマン・シネマを生み出したひとりであり、現代映画を代表する映画監督である。第37回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『パリ、テキサス』(’84)で、ロードムービーは彼の代名詞のひとつとなり、『ベルリン・天使の詩』(’87)など数々の名作を発表し、80年代、90年代のミニシアターブームを牽引する。現在の日本映画への影響は計り知れない。小津安二郎との出会いは、キャリアのなかで大きな出来事だった。「東京物語」のタイトルからはじまり、ヴェンダース本人のナレーションで小津の形跡を探す旅を記録した『東京画』では、小津の映像がもつ優しさと秩序について語っている。また『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』 『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』 『セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター』など、数多くの斬新なドキュメンタリーなども手がけ、ドイツの現代アーティスト、アンセルム・キーファーを描いたドキュメンタリー『Anselm』 の公開も控えている。
映画監督だけではなく、プロデューサー・写真家・作家としても活動を広げている。彼の撮影した写真は世界中の美術館で展示されており、写真集やフィルムブック、彼が書いたエッセイと共に出版もされている。現在妻ドナータ・ヴェンダースとベルリンに在住。2012年に夫妻はデュッセルドルフにNPO財団「ヴィム・ヴェンダース財団」を立ち上げ、ヴェンダース作品の復元と共に視聴者がいつでもアクセスできるように作業を進めている。また、この財団を通して若いアーティストに「Wim Wenders Grant」を授与するなど、次の世代の映像作家たちを支える活動も行っている。